氷海航行船舶の性能解析技術の開発

物理ベースモデリングによる氷片相互作用の数値解析

船舶が多数の浮氷と衝突,相互干渉しながら航行する状況を数値解析によりシミュレーションする技術を開発しています.

「物理ベースモデリング」と呼ばれる運動解析技術を応用しています.物理ベースモデリングをこの分野の解析に応用したのは流体工学研究室が世界初で,パイオニアと認識されています.その後この解析技術は急速に普及し,現在では多くの研究者に利用される一般的な手法になっています.(non-smooth DEMと呼ばれることもあります.)

小氷片密集水路航行船舶の数値解析

小氷片密集水路航行船舶の数値解析

背景

さまざまな理由から,北極航路の利用が着目されています.

このような理由から北極航路を航行する砕氷型あるいは耐氷型の船舶への性能や安全性に対する関心が高まっています.北極海は夏季の海氷は減退しているものの,そのぶん北極点付近や氷河由来の固い氷(多年氷)が流出しやすくなっており,氷片衝突時のリスクは減少していると言い切れません.

実験による性能解析の限界

砕氷船または耐氷型海洋構造物を設計するに際してその砕氷・耐氷性能を予測するためには、現時点では氷海水槽での模型試験がもっとも有効で現実的な方法だと考えられます。特に設計の最終段階では、船型模型を作成して実験し、その設計の有効性を確認する必要があると思われます

しかし設計の初期の段階で、多くの設計パラメタに対して最適な値を見つけようとするときには、氷海水槽での模型試験は安易に実施できる方法ではありません。現在、日本で稼動している氷海水槽は1施設のみで,世界的にも10施設未満です.また氷海水槽の実験では氷を張る必要があり、1枚の氷に対して実施可能な実験内容は限定されるなどの理由から、多数の実験を行うことができません

このような理由から「数値解析による性能評価」や「通常水槽を用いた性能の解析」ができるようになることが望まれており,流体工学研究室でもこの課題に取り組んでいます.

北極海を航行する船(写真提供:大塚夏彦教授(北海道大学))

論文

物理ベースモデリングをこの分野の解析に応用したのは流体工学研究室が世界初で,下記の講演会論文で発表しました.その後この解析技術は急速に普及し,現在では多くの研究者に利用される一般的な手法になっています.


比較的最近の論文.物理ベースモデリングを用いて小氷片密集水路航行船舶の解析を系統的に行い,議論している.


日本語で説明している論文

残された研究課題

たくさんあります。以下は一例。